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PROTECT ME FROM WHAT I WANT

私は 2 週に 1 度英語を習っている。実際は習っているというよりおしゃべりしにいっているという感じだけど、授業料をお渡ししてるので習っていると表現しておく。授業は雑多なトピックを英語で話すだけ。授業についてはここでは詳しく話さない。先生であるカリフォルニア出身のじいさんには見習いたいところがあるという話。

彼はお金が大好き。授業後のお支払いを忘れていると「ンン〜、マニマニ〜」とにこやかにリマインドしてくれる。この胆力は見習いたいと思っているしそんなあけすけな彼のことはしょうがない人だと思って笑っている。

彼は週末になると宝くじ売り場に通う。前回買ったいくつかの LOTO7 の当選番号を確認し、そしてまたいくつか買っていく。授業中のトピックも宝くじに関するものが多い。アメリカの宝くじでは目が飛び出るような金額の高額当選が出たんだとか。ちなみに高額当選したら授業料タダにしてねと言ってはある。まだ当選してなさそう。おかげで授業料は発生し続けている。そんな甘くないよね。 でもそんなお金大好きな彼はクネクネしながら「オーゥ、ランボゥ〜」と言ってランボルギーニ大好きなセレブリティを揶揄したりする。

彼は旅行と美味しいご飯を食べることが好きだ。 インドネシア離島の美しい海と美味しい料理の話。どっかの手付かずのジャングルとそこを抜けた天然のプライベートビーチの話。クロアチアの街で恋に落ちた女性に見送られ駅を去る話。どっかのジャングルの奥地でヘビを食べた話。タイの川沿いでゾウの背中に乗ってめっちゃ揺られた話。私の目から見て、彼は人生を楽しむのがとても上手に見えた。

マーケティング、お金、モデルは、価値のヒエラルキーを明確にしていない人の欲望をゆがめる。*1

彼はちゃんと価値のヒエラルキーを持っているようだ。よくある消費を促すためにつくられた価値には興味がないように見えた。お金が大好きなのに、その使い道はとってもはっきりしている。自分の欲望をよく知っている。

ジラールの(欲望の)模倣理論では、(中略) 人々は単なる情報の運び手ではなく、欲望のきわめて重要なモデルなのである。私たちはモデル化されるものよりも、モデル化する人のほうを気にする。真似る目的は、真似そのものではなく、自分の差別化にある。ほかの人と比較してアイデンティティをつくろうとしているのだ。*2

街に出るとたくさんの広告が目に入る。煌びやかなバッグを下げた長身の美しい人。肉汁がすんごくてちゃんと高さがあるハンバーガーをほおばるマッチョ。広告を作った人たちは「欲望の模倣」をよく理解している。広告を見る自分はどうだろうか。お金を使ってしまうだけならまだ良い。本当に大切だった欲望まで見失ってしまうのでは元も子もない気がしている。

「PROTECT ME FROM WHAT I WANT」

これはアメリカ人アーティストのジェニー・ホルツァーの言葉らしい。 それでも結局誰かが守ってくれるわけじゃない。自分で欲望を守らなくちゃならない時代なのだ。オーゥ、ランボゥ〜。

*1:ルーク バージス. 欲望の見つけ方 お金・恋愛・キャリア (p.178). Kindle 版.

*2: ルーク バージス. 欲望の見つけ方 お金・恋愛・キャリア (p.145). Kindle 版.